このブログを書きだしたときは、外国人観光客の普通の東京案内だけだった。それから、自分が「日本人の知らない日本語」に登場したことがきっかけで、畳化シリーズと、日本人との出会いシリーズを書きました。
それから、今は、『日本のあいうえお』というシリーズも書くことに決めました。ひらがなのすべての文字に一つの「日本と言えば…」とある独特・特有な物や概念について書いています。今までは「挨拶」、「居眠り」、「うるさい」、「英語」、「思いやり」、「かわいい」、「擬態語」、「空気を読む」と書きました。今日のテーマは「日本の「け」は「敬語」の「け」」となりました。
小学校一年生から高校を卒業するまで、私はずっと合唱部のメンバーであって、歌うのは好きです。高校2年生から浪人になっても週に一回、声楽の授業を受けました。
ドイツ人は歌うことは大好きで、森を歩く時に突然歌いだしたりします。
クララパパもドイツ民謡ではないけれども、突然スーパーのレジでジャズの歌を歌いだします。私は「お父さん、恥ずかしいよ。やめて」と怒ると、パパがいっせいに大きな声で歌います。
もう慣れていますけど、一度親子一緒にスーパーのレジで歌ってみたいですね。
もちろん、日本でも歌うことは大好きです。雨の日は道路を走る音が大きくて、歌っても、誰も気づかないから、雨の日も大好きです。
そういう私ですから、もちろんカラオケも大好きです。
ドイツ語の歌も歌いたいけれども、なかなかありません。決まった「ロックバルーンは99」、「モスクワ」の他に、「鱒」、「音楽に寄す」、「歓喜の歌」だけです。ドイツ文化会館でドイツ語版「喉自慢大会」をやってもらいたいところです。
ダニエルさんと同じように歌が大好きな友達と転々とカラオケ店を開拓しています。どのチェーンは一番充実しているのかいまだに分かりません。その中に都内のあるカラオケ屋さんにたどり着きました。
「当店のご利用は初めてですか。」
と丁寧にリモコン等々を説明してくれました。その説明が終わってからは、
「ご注文がございましたら、電話を差し上げて下さい。」
と言われました。
ダニエルと私は顔を合わせて、またアルバイトの女の子を見て
「あっ、はっはい。分かりました。」
とそれしか答えられませんでした。
バイトが部屋を出てからは、
「ええ、誰に電話を差し上げるの?」
「さあ、神様?」
「うふふ、ダニエル様に電話を差し上げよう!」
「そうだ!みな、僕に電話をしたまえ!」
と、笑いを崩れました。
ダニエルも私も人見知りはしません。自分の意見をはっきり言うほうですけど、あんなに元気な子は外国人に敬語を指摘されていたら、元気がなくなるのかなと思って、二人も何も言いませんでした。
ほとんどの教科書はそうですけれども、最初のレッスンはすべて「ですます体」となっています。話す相手は偉い人であっても失礼なことを言ってしまう可能性が低くなる予防対策ですね。
ただ、留学してくると、そうだと限りません。
例えば、30歳の留学生がいてもおかしくありません。日本の大学生は当然、20歳前後で、こういう会話はあり得ます。
「ねえ、キムさん、今夜カラオケ行かない?」
「はい、是非カラオケへ行きましょう。」
「どこがいいかな?」
「駅前に新しい店は開店されました。半額の券は持っていますけど、いかがですか。」
「いいね、いいね。」
「では、何時に会いますか。」
「7時に管理人の部屋の前ではいかがですか。」
「そうしようっか。」
「では、7時に。よろしくお願いします。」
「バイバイ!」
と、こういう差が自然に生まれてきます。もちろん、日本人学生と交流も増えれば、それがなくなります。
私も最初は敬語は大変でした。
確かに日本語は一、二年だけ勉強したところで、後期の最後のところに、尊敬語・謙譲語の違いを覚えたところでした。その知識で日本に留学しますので、自分で話すのも大変だけど、日本人の敬語にも疑問はたくさん。
「ご注文はお揃いになりましたでしょうか。」
「ご注文はオ揃い・・・って、なぜ、注文をたてている・・・ご注文は揃いましたでしょうか。」
「ああ、じゃあ、後はから揚げ・・・」
「唐揚げかしこまりました」
「箸の方はいかがですか。」
「ええ、選んでくれということですか。お寿司をフォークとナイフで食べるか、それともお箸で食べるのか?それはお箸の方がいいです。」
「では、寿司定食になります。」
「なるの?って、いつ食べればいいですか。」
「どうぞ、いつでも召し上がって下さい。」
「でも、『定食になります』ということは、これからなるということじゃないんですか。これから定食になるんだったら、なってから食べたいので・・・」
「どうぞ、いつでも召し上がって下さい。 」
それから、しばらくしてからは・・・ 「お客様、もう閉店させて頂く時間になりましたので・・・」
「閉店させて頂く?特に閉店するように頼んではいないけど・・・」と思いながら、レジへ…
「では、800円でございます。」
(一万円札を渡す)
「10000円から預かりいたします。」
「ええ?なんで?10000円から預かる?私外国人であっても、人間ですよ。10000円札ではないよ。失礼なぁ。それから、預かるんだったら、『引き受けて保管する』ということですか?保管するんだったらと、いつか戻してくれるってこと?」
もう何年日本に住んで、敬語もある程度話せる自信がついたところに、お客さんに電話をしました。
「NAZO社のクララと申しますが、いつもお世話になっております。」
「ほおおい。」
(普通は『お世話になっています。』というんじゃないの?それから、普通は名乗るんでしょうよ!)
「BUREI株式会社でいらっしゃいますでしょうか。」
「そうよ。」
(はああ・・・ 『そうよ』だって・・・)
「第二開発部の田中太郎様はいらっしゃいますでしょうか。」
「タナカ?いねえよ。」
(何これ?温厚の人の怒らせ方三巻?席はずしたのか、会議中なのか、海外出張なのか、それぐらい教えてくれ!)
「そうですか。では、いつ戻られるのでしょうか。」
「わかんねぇ」
(・・・沈黙・・・ ここで相手側は調べるか、折り返し電話するとか、答えるでしょうけど・・・沈黙。幼稚園じゃねえよ。社会人でしょう?!)
「左様でございますか、では、お戻りになりましたら、NAZO社のクララから電話があったとお伝えいただけますでしょうか。」
「いいよ。」
(絶対に誰から電話があったのかわからないのに!絶対倉田と聞き間違えています!)
「念のために名前を・・・」
「はい、言ってよ。」
「NAZO社のクララ・クレフトと申します。」
「はいいよ。」
(本当にメモは取られたのかな?普段はじめて話す人はクララ・クレフト聞き取れませんよ。倉田樺太になったことありますし・・・大丈夫、おじさん?)
「ではよろしくお願いします。」
「ほおい」
ふざけるな!声からすると、相手が50歳の男性で・・・
日本語の勉強し出して、「日本語のどこが一番難しい」という質問に対して、当初はおそらく「敬語」と答えたと思いますけど、それは単に、ヨーロッパの大学で日本語の勉強して、日本で留学して、敬語に触れ合うことはあまりなかったからだと思います。ネイティブも間違ってしまうから難しいとよく言われますが、それは普通の生活で触れ合う事はないからです。
例えば、カラオケのお姉さんはおそらく大学生です。
小中高の時は朝夜は家族だけと接し、昼は友達、教員だけと接し、さほど敬語を使わなかったでしょう。
(もちろん、先生に対しては敬語を使いますけれども、中学生が先生に対して、「では、感想文を読ませて頂きます。」のような事を言うのはとても想像することは出来ません。)
親も交流があまりなければ、子供も敬語を聞いて使う機会はないでしょう。昔はよく学校訪問をしましたが、子供の質問の仕方で親も分かります。「ドイツは車もあんの?」と5年生に聞かれたこともある一方、同じ5年生に「ドイツの環境保護政策が優れていると聞いていますが、具体的な例を挙げていただけますか。」と言われました。
椅子から落ちそうになったぐらいに驚きました。
今回は大変痛いところを突かれました。これは「敬語」という言葉の問題だけに留まらないからです。1945年8月15日から始まっている日本社会の自己破壊なのだと、わたしは思っています。この日、それまで日本人の美徳とされていたことが全て否定されました。当然儒教の精神も軽視され、親の言うことや価値観も否定するようになりました。
クララさんが得意な昭和のムード歌謡を持ち歌としていた人の中には、フランク永井とかバーブ佐竹とかアメリカ風の芸名の人も少なくありません。そう、クララさんが今接している小学生は、戦前に成人だった世代のひ孫に当たる世代なのです。
広島と長崎に落とされた二つの原子爆弾は、今も日本社会を内側から蝕んでいます。お忙しいところ大変恐縮ですが、安っぽいB級グルメになり下がってしまった日本人の価値創造、お手伝いしていただけないでしょうか。
投稿情報: asariya38 | 2012/02/21 00:41
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿情報: ビジネスマナーの敬語 | 2012/03/19 14:13