このブログを書きだしたときは、外国人観光客の普通の東京案内だけだった。それから、自分が「日本人の知らない日本語」に登場したことがきっかけで、畳化シリーズと、日本人との出会いシリーズを書きました。
それから、今は、『日本のあいうえお』というシリーズも書くことに決めした。ひらがなのすべての文字に一つの「日本と言えば…」とある独特・特有な物や概念について書いています。今までは「日本のあは挨拶のあ」、「日本のいは居眠りのい」、「日本のうはうるさいのう」、「日本のえは英語のえ」、「日本のおは思いやりのお」と書きました。今日のテーマは:
日本の「か」は「かわいい」の「か」
説ですけど、赤ちゃんが「ありがとう」と「すみません」より先に覚える日本語は「かわいい」です。
おそらく、日本人が一番先に脳で処理される単語でしょう。
里帰りして、子供を産んだ新米のお母さんが誇らしげに赤ちゃんをはじめて親戚と近所の人にみせて、そこで、もちろん老弱男女の反応が「かわいい!」の合唱でしょう。
そのため、日本人の赤ちゃんははやいうちに、「かわいい」とはとても大事な言葉であると覚えて、自分もすぐに大切に使っている単語の一つにします。
もちろん、人間の本能ですから、かわいい赤ちゃんを見ると、それはどこだって、その言葉で、「かわいい」と言いますけれども、日本国はカワイイ一色である。
日本はカワイイで払う。カワイイで祈る。カワイイでヤる。
クレジットカードはかわいいアニメのキャラクターが付いている。お守りもかわいくてキティちゃん、コンドームだって、キャラクターが付いていて、かわいい。
カワイイなんて、もちろん我が旅券を発行しているドイツ連邦共和国もあります。私が子供の時にオッティファントを描いたり、モンチチも、リトル・ツイン・スターズも持っていた。10年前にはディディルがはやって、今の女の子がプリンセス・リリフェーにはまっています。(日本の基準でかわいくないんですけどね)
ただ、大人がディズニーランドの年間パスを持って、大人が五つの携帯ストラップ以上を携帯につけているなんて・・・普通のドイツ人には想像できないと思います。もともと欧州の携帯電話は携帯ストラップがつけられるように設計されていないようです。
友達の言葉で言うと、
「知能が正常に働き、自尊心のある大人はカワイイを買わないでしょう。」
私がはじめて日本に来た時に、その「なんでもかわいい主義」に驚きました。当時の旅日記にこう書いてある。
「子猫から、アニメのキャラクターだけではなく、日本は(ワタシの価値観で)厳かでアルベキ施設もキャラクターがついている。例えば、銀行、行政、博物館、公益事業まで。
警察にキャラクターがついて、市民をバカにしているのかよ?
理解できません。
日本はねばねばと、カワイイ漬け。絆創膏にだって、キャラクター。カワイイは剥がそうと思っても出来ません。」
確かに、航空会社にはポケモンを飛行機につける。クレジットカードにアニメのキャラクターをつける銀行も少なくない。(『かわいいキャラクタークレジットカードや、おしゃれなデザインクレジットカードの比較サイト』までありますよ。)選挙にはめいすい君がいる。警視庁にはピーポくんがいる。平城遷都1300年記念事業でさえセントくんがいる。
製品自体はサービス、つまり手に取れないものの組織はかわりにマスコットでそのサービスを宣伝するということになりますね。
怖いものでさえ擬人化されます。一番驚いたのは、ツナミの擬人化。確かにその方は分かりやすいかもしれないけれども、かわいくするのに、怖さがなくなります。それは逆にまた危ないと個人的に思います。
しかし、「カワイイ」とは、中学生とOLが同時に加わる恍惚の合唱団。
「カワイイ」とは、「物が小さくできていて、愛らしく見えるさま。」でもあれば、「これ欲しい!」、「これ守ってあげたい」のでもある。
それから、大人になるほど、子供時代への郷愁に満ちたうめき声
子供のときは甘やかされるけれども、大人になると、厄介なことが多いから、おかしくもないかもしれない。
日本人の友達と話したら、「日本人男性は、『ピーターパン症候群』なのよ。つまり、
「成長する事を拒む男性」なのよ。いい年して、またママに洗濯をしてもらって、実家に住んだりして、ドイツで考えられないでしょう?」
そうですね。ドイツで電車や地下鉄で漫画を読んでいるビジネスマンはまず考えられません。(漫画を研究している日本学者、漫画を訳している翻訳者、漫画をドイツ語で出版している出版担当者は別として・・・) おそらく周りの女性は「チッ!」というのが多いでしょう。高校を卒業した時は、どんな事情があっても取りあえず、ドイツ人は実家から追い出されます。
「あんたがいつまでもうちにいたら、近所に何言われるのか知らない。はやく出なさい。」
家を出て、少し旅したドイツ人男性の話すです。知り合いのアンドレさんがはじめて日本に来た時の話です。今はもちろん流暢な日本語が話せますが、当時は日本語が話せるスティーブさんのところに泊まっていました。日本語会話集を持ってこなかったアンドレさんはとりあえず、在日暦の長い、日本語流暢なスティーブさんに聞いてみました。:
「お礼を言う時はなんと言えばいいですか。」
そうすると、その意地悪スティーブさんが「ありがとうございました。」ではなく、
「かわいいですね。」
と教えてあげました。
アンドレさんは観光スポットを回って、もちろん、明治神宮、竹下通り、表参道という定番のコースも行きました。表参道、原宿、渋谷を歩くと、そこにいる女子高生、OL、奥様が小物を見せ合って、「かわいい」とコメントをしていたので、 「ああ、これはきっと、ガイドブックに書いてある日本の贈り物文化なんだ。お互いにプレゼントをして、『サン キュー』といっているんですね。」
と思いました。
アンドレさんはあっちこっちに、「かわいい」と聞いていたため、すっかり「僕も言ってみよう」という気持ちになって、挑戦したくなりました。
スティーブさんは新大久保に住んでいたため、アンドレさんはよく新宿駅から歩いて帰りました。ある日に、歌舞伎町の喫茶店で黒いスーツのおにいさんに、「おい!忘れ物!」と忘れ物をレジまで持ってもらっていたら、きちんとお礼を言って、黒スーツのお兄さんに対して
「かわいいですね」
と挑戦してみました。
そのお兄さんの顔がとても怖い表情に変わりました。
「僕の発音はきっといけません。きっと、変なことを言ってしまった!どうしよう?!」
とアンドレさんは心配して、夜にもう一度日本語流暢なスティーブさんに確認しました。
次の日はアンドレさんが田舎でホームステーする事になっていましたが、新幹線で時間をつぶすことになっていたので、コンビニでおにぎりを買おうと思っていました。新大久保の近所のコンビニの店員に対してもやはり感謝の気持ちを表してみたかったです。しかし、あまりにも自信がなかったため、レジのお姉さんに「かわいいですね。」とささやきました。
本人が顔を赤くして、行列で待っていたお客様に向けて「次をお願いします。」と言っていたため、「まずい!僕、本当に発音が悪くて、いやらしいことを言ったのです。」と思ってしまいました。
それから、田舎のホームステー先でも、食卓に囲んで、おいしいトンカツが出て、ホストマザーの料理に対してお礼が言いたくて、トンカツを指差して、「かわいいですね。」と言ってお辞儀をしました。ホストマザーが「あら、小さすぎるのかしら?」と慌てて一番大きいとんかつをお皿に乗せました。
アンドレさんは二枚が充分でしたが、とりあえずはお礼を述べて、「かわいいですね。」とニコニコしながら答えました。
そこで、ホストマザーが隣のスーパーまで走って、肉を買って、また台所に立って、新しいトンカツを作りました。アンドレさんは大きとんかつを三枚も食べて、お腹がいっぱい、いっぱいになるまで食べてしまいましたけれども、
「お礼を言うと、またすぐに新しいものが出るので、あまり話さない方がいいのでは?」
と思ったそうで、それきりは御礼を英語で "Thank you!" にしました。
しかし、アンドレさんはまた日本語ぺらぺらのスティーブさんの元に戻ると、その人があまりにも流暢と話していることをうらやましがって、自分もまた挑戦しようと思っていましたので、また朝にコンビニに立っていた女の子に、毎朝、
「かわいいですね。」
とささやいていました。
女の子は毎朝に顔を赤くしいましたので、アンドレさんがその女の子に好かれているのかと思って、女の子も毎朝「かわいいですね」と知らない外人に言われてきたから、好かれていると思って・・・ 言われないまでも、二人は付き合って、アンドレさんが日本語の勉強をして、今は千葉でマイホームを買って、東京で日本企業に勤めています。
朝に奥様にお弁当をもらう時には、毎回「今日もかわいいですね。いつもありがとう!」と言って、家を出ていますって。
かわいい旦那さんでしょう?
日本のあいうえおの「き」はすでに決まって、書いているところですけど、「く」と「け」のアイディアは募集中!是非とも@808townsまで、またはコメント欄にお願いします。
「かわいい」は平和の象徴。これで いいのだ!
ネオテニーと島の進化
日本の「かわいい」は、東アジア(新モンゴロイド生活圏)全体で好感を持たれるようです。これは進化の過程で獲得した東アジア人の遺伝的特性と言えるでしょう。一方、コーカソイド、ニグロイドは、総じて早熟方向に進化の舵を切ってきたようです。そして、互いに生活圏を巡り争いが絶えなかったために体格もどんどん大きくなりました。「かわいい」は、争いを好まなかったご先祖さまたちが細胞の一つ一つに刻み込んだ平和への祈りではないでしょうか。
ネオテニー(neoteny)とは、動物において、性的に完全に成熟した個体でありながら非生殖器官に未成熟な、つまり幼生や幼体の性質が残る現象のことです。幼形成熟、幼態成熟とも言われますが、新モンゴロイドは顔の凹凸が少なく、女性は他の人種よりも若く見られるように、まさに「かわいく進化」をしてきました。それは、過酷な寒冷地で命をつなぐために、受胎の期間をできる限り長くするための戦略であり、進化の方向性なのです。
もう一つは島の進化。島と言う閉鎖的な生活環境に置かれ、限られた食料で最も効率よく繁殖する為に、体の大きさが大陸種と比較して小さくなりました。中国で代表的な漢民族は日本人よりも平均で10cmも背が高いのです。日本人は、日本列島の生活環境に合わせて小さく(=かわいく)進化してきたのです。
「若く(幼く)見られる」ことは、マンモスがいた時代から東アジアでは生き残るために必要不可欠な条件ではなかったかと私は思っています。加えて「小さい」ことも、島国日本では重要視され、若く見られることと小さいことは「かわいくて良いこと」となったのだろうと推察しています。中世、鎖国をしていた江戸時代には、生活文化や芸術の微に細に「かわいい」が花開くこことなります。
近代、太平洋戦争に負けても、人々の心は重厚長大の方向には向かわず、昭和元禄と呼ばれた平和な時代に日本のマンガやアニメが花開き、「かわいい」をより深化させました。「かわいい」が世界中で受け入れられるようになれば、争いごとも少なくなるのではないかとわたしは考えています。
付けたし
モンゴロイドは、乳幼児のおしりに緑色のあざ(蒙古斑)が現れ、大きく二つに分類されます。一つは東南アジアを起源とし、南太平洋、アメリカ大陸に広く分布する古モンゴロイドで、もう一つは極寒のシベリアで新たな進化を遂げた新モンゴロイドです。古モンゴロイドは顔の堀が深く二重まぶた、お酒にも強いのが特徴です。新モンゴロイドは顔が平たんで一重まぶた、お酒は弱い。中国大陸、沿海州から朝鮮半島にかけて広く生活しています。日本列島には両者が混然一体となって暮らしています。
全然かわいくない人が書きました(^_^;)
投稿情報: asariya38 | 2011/09/06 17:19
記事は読ませていただいてましたが、PCの調子が悪くてコメントするまでに至らず遅まきながら、ドイツ公演お疲れさまでした。
「かわいい」には親密度を増す効果というか、「あなたを竹馬の友の様に思っていますよ!」という意味合いも込めて使う場合もあるのかなあとおもいます。江戸っ子のいい年をしたオジサンが互いに「~ちゃん!」と幼き頃そのままに呼び合うように。
擬人化で「怖さ」が無くなる…落語にあったか忘れましたが、『姑にいびり殺されたお嫁さんが、何かと慰めてくれた優しい隣のおばさんのとこに化けて出て、「姑のとこに出ないでうちに来るとは了見違いも甚だしい!」と叱られて「姑のとこにはとても怖くて出られなかったもので。」と答える』話があります。お化けに怖がられるお周さん、お化けを叱る気丈なおばさん。一番怖いのは人間!というオチ。ならば擬人化もアリかも?
「く」と「け」のアイデアは今のところ浮かびません(T_T)ので「き」を楽しみにしています。
投稿情報: molinobannin | 2011/09/06 23:19