このブログを書きだしたときは、外国人観光客の普通の東京案内だけだった。それから、自分が「日本人の知らない日本語」に登場したことがきっかけで、畳化シリーズと、日本人との出会いシリーズを書きました。
それから、今は、『日本のあいうえお』というシリーズも書くことに決めました。ひらがなのすべての文字に一つの「日本と言えば…」とある独特・特有な物や概念について書いています。今までは「日本のあは挨拶のあ」、「日本のいは居眠りのい」、「日本のうはうるさいのう」、「日本のえは英語のえ」、「日本のおは思いやりのお」、「日本のかはかわいいのか」と書きました。今日のテーマは悩んだ挙句、日本の「き」は「擬態語」の「き」になりました。(おませな読者の皆様方、正確は「ぎ」と分かっていますよ。)
よく、「日本語って難しいでしょう?」と聞かれます。
「日本語は世界一難しい言葉だから、大変でしょう。」とも言われます。
「でしょう」と聞かれるんだから、「相手に対して念を押したり同意を求めたりする気持ちを丁寧に表す」表現ですから、聞き手は、日本語が世界一難しい言葉だと思って、その同意を求めています。
ここで、答えは大変困っています。
長い間は、「そうではないよ」といってしまったけど、、相手はがっかりしますので、よくありません。「そうですよね。」と答えると、実はそう思っていないのに、同意は装っているだけで、相手には悪いと思います。困ったもん。今は、だいたい、「世界一難しい?こんなことはあるんですか。」と質問をします。
たいたいの人は、自分の母国語が世界一番難しいと思います。中学の国語の担任に「おまえらは世界一難しい言葉のドイツ語は母国語である事をありがたく思いなさい!」 フランスに留学した時に、フランスの国語の先生は「よくも世界一難しい言葉を勉強してくれた。」と言われました。(フランスには昔からディクテーションが重視され、Dico's d'Orというスペル大会もありました。受賞者は「中高生、大人プロ、大人アマチュア」というカテゴリーの他、「フランス国籍、フランス語圏、非フランス語圏外国籍学習者」にわけられています。それから、ポーランド人にも「世界一難しい言葉はポーランド語だよ!」と言われたことがあって、同じようなスペル大会があるそうです。
大変、申し訳ないけど、日本語は世界一難しい言葉と思っていません。もともと「世界一難しい言語」というのが、存在しなく、難しいかどうか、日本語学習者の母国語によります。
韓国語が母国語の方は日本語を覚えるのはすごくはやい。
それから朝鮮系中国人は漢字も解るから、もっとはやい。
文法も文字も違う、あまり外国語に触れていない英語圏の人はそれに比べて遅いかもしれません。
日本語の文法は本当に簡単なんですよ。
まず、複数はない。
名詞は性別がない (ドイツは男女中もある)。
語形変化もありません。(フィンランド語は10何格もある)
過去形は一つ (英語は、過去時制、大過去自制、完了時制で、過去完了時制、それに進行形で過去進行形、過去完了進行形まである。)
未来形はない。
そういう日本語は素敵でしょう!
もちろん漢字もあるけど、私はただ最初に、書き順が説明されていないうちに混乱していました。一回、書き順を説明してもらってからは、かなりロジカルなもの・・・
- 女が箒をもって、婦人
- 家にいる女は嫁
- 古い女は姑
- それから、米が異なって→糞
もちろん、全部がそう簡単ではないけれども、漢字は一度覚えれば、楽 ♪
漢字を見て、「感染性単核細胞症」はどんな病気なのか、ある程度分かります。
しかし、擬態語擬音語はすぐに分かりません。
「首相候補はめそめそ泣いていた。」
なんて言われて、映像を見ていない日本語学習者は、なかなか分かりません。
しかし、涙の流し方と、涙の量を擬態語無しに説明しようとしてみて下さい。
「花嫁の元カレは結婚式場の前で立って、号泣した」とまたいうけど、
「太郎君は涙をこぼした。」、「先生は涙にむせんでいた」「おばあちゃんは涙にくれた。」、「涙が部長の頬を伝った」なんて、その事情を人に話すと、あまり使いませんよね。
会話ではやはり擬態語で一番表しやすいです:
しくしく、めそめそ、ぽろぽろ、えんえん 、わんわん 、わあわあ、さめざめ、 くすんくすん、 えっうえっ、おいおい、ひーひー、わっと、ほろほろ、はらり・・・
しかし、辞書で(例えば、英和辞典で)「cry/ weep/ sob等々」と引いても、それらの言葉はほとんど載っていません。聞いて覚えるしかありませんでした。
そこで、大阪の友達の実家でお好み焼きを食べた時の話です。友達のお母様に
「うちは、鰹節どっさとかけるから、かけておいて。」
と言われました。
「どっさっと? ふ~む。どれぐらいかな。」
と思いながら、ホーストマザーの顔を確かめながら、ゆっくり鰹節をかけていたら、「はやくしてよ!」と怒られました。
それから、次の日に、自転車に乗って、友達のお母さんに、お使いを頼まれて、自転車に乗りました。
道がなかなか分からず、八百屋さんのおばさんに聞いたところで、
「あの、二丁目の三の四はどこですか。大きなピンク色に塗った建物だそうです。」
「あれっか。あれはね、まっすぐ行って、ちーとばかし行ったら、キュッと曲がるトコロがあるんだよ。そこは 入ってね。」
「ありがとう」
と、頭の中、
「ちーとばかしはどれぐらい?それから、キュッと曲がるのがどんな曲がり方、何度かな?」
と考えました。
擬態語と擬音語はどれぐらい大変なのか理解頂けたでしょうか。大阪の方はまだ手振りも多く使っていらっしゃるので、どうにか解りました。
それでも、解らないところがありますよね。
前に付き合っていた人が鉄板焼きで指に火傷して、手を差し出して大きな声で、「ふうふうして!」と叫んで、わたしはただ・・・
「ふうふう?ええ、夫婦?なに?なにすればいいの?これって、プロポザルじゃないよね?」
と思いながら、やはりきょとんとしました。
かわいそうな(モト)彼、外国人彼女ならではの経験ですね。
そういうことを経験して、擬態語ははやくも、大きなハードルと認識して、会話で聞く度に意味を聞き出して、それから漫画を読み出しました。しかし、趣味は偏って、まじめな漫画やシュールな漫画が多すぎて、それほど擬態語や擬音語が出てこなかったんですよね。がんばっておぼえようと思っても、なかなか使い方が分からないのも問題でした。日本語の先生の友達、海野凪子さんに聞いたところ、「日本語がネイティブ並みに流暢であるという判断基準は何?」と聞いたところ、海野先生は
「擬態語・擬音語が使える」
と即答しました。
私が最初に覚えて擬態語・擬音語は全く覚えていませんけれども。おそらく先輩が日本語を話しているのみて、誰かが、「キムさんはペラペラでうらやましいなぁ」と言った可能性は高い。
立川談笑師匠が「イラサリマケー」というとても素敵なネタを持っています。
サラリーマンが西新宿の居酒屋に入って、店員が全員ビルマ人(ミャンマー人)だから、コミュニケーションがとても難しい。それ以上は言いません(笑) とても素敵な噺で、是非CDを買って下さいね。私も何枚か買って、自分の日本語の恩師と、日本語のライバル(自分より日本語がうまいと思っている友達)にプレゼントしました♪
それから、この間ウィーンで、イラサリマケーで『若旦那』とイラサリマケについて話しました。
二人がその会話で同意したことは、
「あんな片言の日本語しか話せない日本語学習者のビルマ人はそんなに擬態語と擬音語は絶対に使えない筈」
という結論に致しました。(そうそう、言語オタクの二人はいつでも、どんなテーマでも言葉について論じています。)
漫画読書がさほど、勉強になっていないけど、落語会に二年ほど日参して、報われるところがあった。日本語学習歴14年、落語のおかげで、自分の話に擬態語と擬音語がかなり増えました。それから、まだ小さいのですけど、ようやく擬音語の耳が出来ました。擬音語の耳はどういったことかと言いますと・・・ 例えば、蝉を聞いて、
「ああ、これはみんみんと鳴いている。」
と思って、友達に確認すると、「もう、みんみんないて、うるさいね。」
それから、人の挨拶を聞いて、
「この人の声、キーキーしているんだ。」
と思って、周りの人が私の考えを口に出して、
「この人、きーきー、聞くのは疲れるね。」
と検証できるようになったのはとても嬉しい。
しかし、まだまだ完全にマスターはしていません。今、欲しいのは、逆使用の擬態語と擬音語の類語辞典。今は出版社が出している辞書は擬態語・擬音語だけを引いて、その意味が解る辞書ばかりです。
独和辞典、英和辞典で単語を引いても、擬態語・擬音語が出るのはまれにありません。
事前に紹介した、「ドイツ語で降る雨」というエントリーでみると、「雨は強く窓を打った」というところで、パラパラと書いてありま せんでした。
ですから、私が欲しいのは:
「泣く」
と引いて、そこで、
しくしく、めそめそ、ぽろぽろ、えんえん 、わんわん 、わあわあ、さめざめ、 くすんくすん、 えっうえっ、おいおい、ひーひー、わっと、ほろほろ、はらり・・・
と、その例文が書いてある辞書がほしいです。
今は、「擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典」と、五味太郎の「ことばがいっぱい言葉図鑑② ようすのことば」でどうにかしていますけれども、誰か、辞書を出してくれないか。
「鰹節をどっさとかけたお好み焼き (大阪府民を対象にした調査による平均値)」
「ぎゅっと曲がる道(全国郵便配達員を対象にした調査による平均値)」
という写真や図も是非入れてほしいんだなぁ
そんな辞書は出版されるまでは落語を聴いて勉強します。
長い文章でしたが面白かったので全部読みました。擬態語や擬音語は日本語だと無数にあります。その場でオリジナルに作ってしまう場合もありますが、日本人同士だとすぐに意味は通じます。
文法的に過去進行形やその他は明確には存在していませんが実際に使う場合にはあらゆる使い方がありますよ。
せみの鳴き声は日本人の場合うるさいと思う人はまずいません。せみの鳴き声や鈴虫の鳴き声などは、日本人には音楽とかもっと崇高な生命の不思議のようなものを感じるのです。騒音として聞こえることはありません。
外国の人がせみの鳴き声や鈴虫の鳴き声を左側の脳で捉えることに対して、日本人は右側の脳で聞くからだそうです。
私は外国人ではドイツ人が一番好きですが、ここまで日本語が達者な人は珍しいですね。セミの鳴き声を騒音ではなく季節の風物詩として、「もののあわれ(憐れ)」を感じられるようになると(音楽のように感じられれば)日本人がずっと身近に感じられるようになりますよ。
投稿情報: 日本人 | 2011/09/18 11:50
昔の中国人の知り合いが「中国語って簡単だよ!」って言っていた。本当に簡単なのかもしれない。
日本語の文法や読み方は割りと簡単だと思う。漢字も暗記だけで面倒くさいだけ。
しかし、女の喋り方、男の喋り方、日常言葉、敬語、独特の方言や地方なまり等を入れるとややこしくなってくる。
例えば:
「それっていーじゃん」
「それは良い」
「それは良いですね」
「それは良きございますね」
とかは、最初はどれを使えば良いのかよく分からないと思う。
又、習うのが難しいと思うのは、「発音」の仕方。「くも」と「くも」の発音の仕方で「雲」か「蜘蛛」になる。これは困難すると思う。
後は方言は地方によって極端に違う事もある。日本語が母国語同士の人だって方言によって言葉や喋り方が分からない事もある。「発音」の仕方も違うのでよく分からない場合もある。
ちなみに、「どっさ」は「沢山」や「いっぱい」と同じ。
「キュッと曲がる」は、何度や角度を示すのではなく、「素早く曲がる」と意味をしているのと思う。「キュッと」は英語で「Squeak」と同じ。マーカーで素早く書くときに英語で「Squeak」と音が鳴ると、日本語では「キュッと」音がする。
例えば、床の上にカカトで90度素早く回転すると、「キュッ」(Squeak)と音がすると思う。「キュッと曲がる」はそう言う意味をしているのと思う。。。要するに、角度で言えば「90度ぐらい曲がる」と意味をしていると思う。余り明確な意味はないと思うけど。
投稿情報: asdf | 2011/09/18 12:10
ちなみに、「キュッと曲がる」と言うのは明確な言葉ではないから、誰もが聞いても良く分からないと思う。「キュッと曲がるとはどんな曲がり方ですか?」と聴くべきだと思う。
上のコメントに、日本人はせみの鳴き声がうるさくは思わないと書いているが、そんな事はないと思う。日本人でもせみの鳴き声がうるさいと思う人がいる。日本人でも人は違う物なので、日本人全てが同じの考えをしている訳でも無い。「あ~、せみがみんみんとうるさい!」と言う日本人はよくいる。日本人は全てが同じと考えているのは多くの日本人の悪い間違った習慣や考え方。
せみの鳴き声には慣れるが、うるさくはないとは思ってない人が多いと思う。
投稿情報: asdf | 2011/09/18 12:38
いろんな方からのコメントが頂けて良かったですね。英会話スクールの方たちと概ね合意に至ったことで、「音楽耳と言語耳って同じだよね。」があります。クララさんも音楽の才能が日本で開花したのではないかと思います。日本も南北に長くて虫の声一つとっても一筋縄ではいきません。はやる気持ちはわかりますが、ここはボチボチ時間をかけて制覇してください。
これはわたしからのご褒美です。http://www.youtube.com/watch?v=W-ohXeRU9H0
投稿情報: asariya38 | 2011/09/18 18:45
せみの鳴き声について「みんながそうではない」「間違った考え方」と指摘されましたが、全員が同じということはないかもしれません。
しかし日本語という言語の性質は自然界の音や声を「右脳」で捕らえるという学問的結果が出ています。
右脳で捕らえるということはそれは「言葉」として聞いているのではなく言語以外の「音楽」などとして聞いているということです。
せみの鳴き声をうるさく思う「場合」があるということではないかと思います。
周囲にもせみの鳴き声を普段からうるさいなどという人にはお目にかかったことがありません。しかし時と場合によってはうるさく感じることがあり、そういう場合は心理状態と繋がっているようです。
日本人の名前をした在日などの場合はうるさいと思うでしょう。
投稿情報: 日本人 | 2011/09/20 12:13
>大変、申し訳ないけど、日本語は世界一難しい言葉と思っていません。
>もともと「世界一難しい言語」というのが、存在しなく、難しいか
>どうか、日本語学習者の母国語によります。
>韓国語が母国語の方は日本語を覚えるのはすごくはやい。
>それから朝鮮系中国人は漢字も解るから、もっとはやい。
>文法も文字も違う、あまり外国語に触れていない英語圏の
>人はそれに比べて遅いかもしれません。
そうですね。中国語を学んだときに、同様のことを感じました。
漢字は少し違うけれど、基本的に日本語と同じ意味だし、
文法は英語にも似ていて、でも語形変化はないから、もっとラク。
漢字の基本的なところで悩んでいた欧米からの留学生達と
比べて、相当速く学ぶことができました。
朝鮮語は、それほどちゃんと学んだ訳ではないけれど、文法は
日本語とそっくりで、単語の一部は漢字を朝鮮の「音読み」で
読んだものも多く、これまでに覚えた知識が流用できます。
だから、ある外国語を覚えやすいかどうかは、その人がマスター
した言語に近いか遠いか、ということに強く依拠していると
思っています。
投稿情報: Kiwazou | 2011/10/02 23:41
1. 会話上級者になりましょう。
わたし自信言葉の才能がないので、「日本語って難しいでしょう?」に類する言葉は掛けられたことはありませんが、日本人がこの言葉を発するときは、あなたを褒めたいという気持ちがあるからです。
たとえば「日本語って難しいでしょう?」と聞かれた時には、「ほんと、そうですね」と返してあげればよいのです。次に「こんな難しい言葉を流ちょうに話して、賢い娘さん」と褒め言葉が返ってくるはずです。
会話は、質問に的確に応えるだけではなく、お互いの関係を良好にする目的もありますので、嘘でもいいから「ほんと、そうですね」と言ってあげると、「日本語って難しいでしょう?」と尋ねた方は気持ちよくなります。特に老い先短いお年寄りには、かわいい嘘でなごませてあげてください。お願いします。
2. オノマトペは日本人でも苦手な分野
「鰹節どっさと」や道順を教えるくだりは、まさに上方漫才のベタなネタです。実は日本人
同士でも言った人と聞いた人の量や距離が、かみ合わないことはよくあることです。以下の事柄を真正面から求められたら、もはやいい加減なオノマトペは使わないほうが良いですよね。上方の人に限らず、「しゅっ」とか「きゅっ」とか音を楽しんでいるのですから、相手に正確な量、距離、時間を求める際には、文字や図にしてもらいましょう。
「鰹節をどっさとかけたお好み焼き (大阪府民を対象にした調査による平均値)」
「ぎゅっと曲がる道(全国郵便配達員を対象にした調査による平均値)」
いつかいっしょに漫才できたら良いと思いました。ただし、わたしが目が悪いからと言って”どつき”は無しですよ(*^_^*)
投稿情報: asariya38 | 2011/10/12 00:46