この半年の出来事にもかかわらず、日本国外にお ける原子力発電所の建設に関わる受注窓口の一本化を狙って設立された国際原子力開発株式会社がベトナムではなんと一兆円のプロジェクトで、ベトナム電力グ ループ(EVN)との間で、ニントゥアン省で原子力発電所を建てるプロジェクトを二件も抱えています。国際原子力開発株式会社の最大株主がおなじみの東電(20%)です。
当然、日本の大手企業もかかわって、昨年度でその企業の原子力業界の利益は242兆円だったそうです。ベトナムが成功すれば、これから諸外国の受注が入って来そうで、つまり大金のことです。
シーメンスと聞くと、どうしても「シーメンス事件」を思い出してしまう方はいらっしゃるでしょうけれども、私は違う事を考えています: 東芝、日立製作所、三菱重工業と肩を並べるグローバル企業、ドイツのシーメンスの最高経営責任者のレッシャー(Peter Löscher)は同社が原子力事業を撤廃する、と9月中旬に発表しました。ドイツで大手企業のあのシーメンスが原子力事業をやめるとは、原発反対運動に負けたような話です。いや、やめることは、お伽噺のようです。
そのスタンスは「原子力撤廃に関するドイツ社会と政治での明確な位置づけ」("klare Positionierung von Politik und Gesellschaft in Deutschland zum Aussstieg aus der Kernenergie")とレッシャー氏がシュピーゲル誌とのインタビューで述べました(インタビューは印刷版のみらしい)。震災後に、世界の主要メーカーで完全撤退を表明したのはシーメンスが初めてだと思います。
巨大な影響力のあるこの企業は原子力事業を撤廃するとは非常に大きい事です。「もはや原子力発電所を建設・それに投資することはありません。」という発言は、原子力事業についての大手企業の明確な意見の表明だけではなくて、将来のヒントでも与えてくれると思います。
1955年までは連合軍がドイツの原子力研究開発を禁止していましたのにもかかわらず、シーメンスはすでに1953年に、原子力勉強会を作りました。研究開発禁止が解禁された1955年に、シーメンスは数社でWG原子力("Arbeitsgemeinschaft Atomenergie")を設立し、1969年にはシーメンスとAEG社がKraftwerk Union AGを設立。しかも、同年に当時世界最大の原子力発電所「ビブリス」の建設を受注・・・ それぐらい原子力にかかわってきました。確かに、昔のデモではよくシーメンスの社名が載っていたバンナーをみかけました。「シーメンスと原子力の発展」という本も出たぐらいに・・・ シーメンスはドイツの原発全炉の設計に加わってきたそうです・
2001年にはシーメンスの原子力部門(Siemens Nuclear Power (SNP))がフランスのフラマトム(Framatome、アレヴァの子会社)と合併して、Framatome ANP (Advanced Nuclear Power)が生まれ、それが2006年にアレヴァNPに改名されました。シーメンスは2009年から、その株を売る意思はあったようですけど、この事業からおりる事で、7億ユーロ(741億円)の罰金を科せられました。、シーメンスは2011年3月18日にその企業の株(34%)を1620億ユーロ(172兆円)で売りました。今はアレヴァNPは100%アレヴァ社のものです。
シーメンスは2009年にロシア国営原子力企業ロスアトムと提携し、両社はその当時に(GE、アレヴァとウェスティングハウスをあとにして)「マーケットリーダーになります」と宣言していましたが、シーメンスは今、ロスアトムと共同で原子力事業の計画も撤廃。
レッシャー氏は、メルケル首相が2022年までにドイツ国内の原発17基すべてを廃止すると決めた事を受け、この判断に影響されたこともあるだろうけれども、もう一つ大きな要因があります: ドイツでの環境保護運動と原発反対運動が深く結びついています。レッシャー氏はシーメンスを「エコ企業」にしたいと事を前から表明していました。しかし、原発設計・建設、最終処分場の問題もはっきりと解決されなく、運営が大きなリスクを伴う原子力事業を続けながら、「エコ企業」と自己宣言する企業とはドイツ人の目ではとても大きな矛盾であり、うそつきと見られています。その矛盾がレッシャー氏の決定も大きく影響されたでしょう。シーメンスは新しい事業を立ち上げて、今は再生可能エネルギーに集中しているそうです。
普段、大手企業はデモなんて影響されていないですよね。売り上げが汚くても、批判されても、そのお金が入ってさえいればいいという営利至上主義が世界のほとんどの企業でも思う事でしょう。原子力業界のやり手のシーメンスが撤廃を決めた事は、経済上の理由もあるでしょう:
つまりジーメンスも原子力の未来はもう信じていません。原子力は収支が合うとは、古い原発で、国が巨大な投資をすることだけあるということは、シーメンスにもようやくわかった気がします。再生可能エネルギーの発電所が原発より速く建てられ、有害物資もなく、エネルギーを提供してくれることはシーメンスにもわかったと思います。アメリカ政府が原発の建設に投資する金額がここ数年増えている。つまりアメリカの原発は投資家ではなく、税金で建設されています。ウォール街の会社も原発の新設を良い投資とみていないことになるでしょうかね?
ギリシャの倒産で話題になった格付け会社のムーディーズもシーメンスの原子力撤廃はポジティブと見ています。
① 原発を構築する際には、委託会社と受託業者は安全仕様に関する議論のきっかけとなって、原子力発電所の建設は財務収益の面で非常に危険でリスキーな事業である。
② フクシマの原発事故を受けて、安全に関する懸念があって、新しい原発が建設されるかどうかは不確か。(ドイツのように)政治介入で原発が停止される可能性もなくもありません。その可能性を考慮しますと、原子力の研究開発の要求はかなり高い。
③ 原子力撤廃することによって、シーメンスはより透明性のあるビジネスに投資することができます。
シーメンスは現行のプロジェクトはそのまま完成させますけれども、開発、それから新しいプロジェクトにはかかわりません。それよりアイスランド等の地熱発電所に集中するそうです。「百年の巨大なプロジェクト」とレッシャー氏が言います。まさにその通りだと思います。是非とも、友達も何人か勤めているシーメンス社に頑張ってもらいましょう♪
ドイツの巨大企業ジーメンス(事業規模は、例に挙げられた三社の比ではありません)の賢明な選択、ご紹介ありがとうございます。まさに勝ち組の選択です。それに比べて、東芝、日立は、多角経営を試みたもののことごとく失敗。八方美人の八方ふさがりに陥ってしまい、市場原理の働きにくい、ゴミ焼却炉や原子力にすがるほかはなかったわけです。
日立や東芝などが、このまま御用商人に胡坐をかいていると、諸外国の人々に多大なご迷惑をかけてしまいますね。ジーメンスの爪の垢、商品化に期待しています。
投稿情報: asariya38 | 2011/10/28 08:53