フライブルクのホテル・ヴィクトリアは一見、普通のホテルです。フライブルク駅から徒歩数分にある4つ星のホテル。全室は禁煙室(ドイツではもうほとんど喫煙室がないそうです。)WLANアクセスは無料。カクテルバーに、「スモーカーラウンジ」、美容室にエステ、サウナ・・・
旧市街でのショッピング、黒い森やアルザス地方でのハイキングする際の拠点としても最適。明治8年に建てら れた、とても素敵なホテルです。
部屋の電球はもちろんLED。
テレビも省エネモデル。
日本のホテルではすでにスタンダードの電気を切るカードキー。
部屋にはファジー論理制御の冷蔵庫(これも日本ではスタンダードですね。)
モーションセンサーに照明タイマーで電気のつけっぱなしを回避。
タオルはお客様は特別に希望される時だけ交換します。(これはドイツではスタンダード、日本ではリップサービスだけですね。)
と、そこまでは日本人はそんなに驚きません。普通のホテル。
水周りも全部節水装置が備え付けられています。
三層もの窓で断熱ばっちり!
朝食バイキングのジャムやフレッシュミルクはミニ容器に入っているのではなく、ガラスや陶器の容器に入っています。
ジャム、フルーツ、ハム、蜂蜜等は全部地産地消の有機栽培・飼育です。
浴槽は身体に合わせたサイズで、余計に水を消費することはありません。
宿泊客は出来るだけ車に乗ってほしくないということで、全員にフライブルク市交通局の一日乗車券が与えられます。
宿泊客だけは利用できる自転車も用意してあります。
シーツはエコ認証された有機栽培の木綿で出来ています。風呂場のシャンプーやボディソープも自然派化粧品。
ベットも圧搾板ではなく、木材です。
まあ、そこまではドイツ人も驚きません、だいたいは普通ですね。しかし、ホテルは、さすがのエコ首都のフライブルクにあります。ここは自転車の数は自動車の数を二倍も超えています。震災後に飯舘の中学生18人がここに訪れて、バイオガス発電発熱やグリーンツーリズムなどを視察したのも偶然ではないと思います。
ここからですよ。65室だけあるホテル、しかも四つ星のホテルは・・・かなりの電力を使いますよね。調べたところ、ホテル・ヴィクトリアだけは21万kWhの電力に45万kWhの熱エネルギーを消費しています。それは60世帯が要する電力、15世帯の光熱に相当するエネルギーです。宿泊客一人だけは一泊に30kWhを消費しています。
ホテルのモットーは「より贅沢」です。エコですから、質素や地味だと思われるかもしれませんが、ホテル・ヴィクトリアは違います。四つ星ですもの。
ドイツで州の環境省2001年、2008年;ドイツ太陽光発電賞2007年; 「環境に優しい通勤」賞2008年、2010年;フライブルク市の環境大賞2011年。
国際: 「世界一環境にやさしいホテル」(2000年、2004年)、エネルギー・グローブ・アワード2001年; REST賞2006年;EMAS賞2008年; HSMA-持続可能性のマーケティング賞2008年。
修士論文のテーマとなったほどのエコホテルです。
受賞され、ドイツ全国新聞に推奨されるまで長い道行がありました。
1985年にシュペート夫妻はホテルを継いだ時に、まだ緑の党はドイツで変人扱いされました。(国会に入っては他の議員はスーツなのに、ジーンズの長髪でいたり、みどりの党の議員は編み物をしたのも有名で、当然かもしれませんが?)
私が1984年の国会議員選挙後に小学校に緑の党についてクラスで話したら、「あんなぷー太郎、国会議員つとまれないよ。」とたいていの生徒には笑われました。
(子供は親の言うことを真似ますね・・・)
シュペート夫妻ははその時に、リン酸塩を使っていない、環境にやさしい洗剤を探し回っていた時に、洗濯機のメーカーに「あんなものを入れられたら、洗濯機は壊れますよ。」と言われたそうです。
それでもシュペート夫妻は諦めないで、家族企業をエコホテルにかえました。
四つ星のホテルでは当時「エコ」というイメージは合わなかったので、特に自分のやったことを宣伝しませんでした。
やれることからはじまって、最初は地産地消の有機栽培・有機飼育の食べ物を取り入れることで、小さい個別放送の物をやめました。そうすることで、ごみは三分の一まで減りました。
シュペート夫妻は二人とも70年代にヴィールで計画されていた原子力発電所のデモに参加していました。
「ただ、原発反対というだけで、どうにもならないから、はやくも再生可能エネルギーに興味を持った」とオーナーのシュペートさんが語る。
ホテルは明治8年に建てられました。当時の建物はいまだに残って、その別館は1980年に建てられました。
ダブル50室、シングル14室、スイート一室。バーも二つありますが、すべては完全に再生可能エネルギーの電力で運営されています。
ルーフガーデンには2000年に太陽光発電システムが設置されました。フライブルクはドイツの市町村で一番日光時間が多い街だともちろん助かります。
2009年にホテルは改築され、今はパシブハウスとして認証されています。
※ 年間の暖房・冷房に使う電力は15 kWh/m² を超えないこと、又はピーク熱負荷は10W/m²で設計されていること。
※ 年間に消費されるエネルギー(電力、光熱等々)は120 kWh/m² を超えないこと。
※ 空気の漏れは建物の中にある空気量の0.6倍を超えない事。
※ 冷暖房負荷が各15kwh/㎡以下
※ 一次エネルギー消費量(家電も含む)120kwh/㎡以下 (ホテルの場合はちなみに82kwh/㎡です)
※ 気密性能として50㎩の加圧時の漏気回数0.6回以下
2007年には新しい空調システムが設置されました。その冷媒は16-20メートルの深さから汲み取られた10-13℃の地下水です。新しい空調システムは旧式の50分の一のエネルギーを使っています。
空調システムも部屋のサイズと、泊り客の数にあわせて空気を挿入しています。
2009年からは小さな風力発電タービン4基を屋上に設置されました。それでも電力は必要であれば、再生可能エネルギーのみを提供するElektrizitätswerke Schönau社で購入します。
晴れの日に、66室の温水に必要な熱はすべて屋上にある30平米の太陽熱温水器だけで賄っています。太陽が雲の後ろに隠れている日には、地下室にある木質ペレット給湯器で作られています。年間には100トンの木材(おがくず)も使われています。一見、それはものすごい二酸化炭素が発生するんじゃないと思われるかもしれませんが、それは木が生長する際に吸い込む二酸化炭素の量と同じです。黒い森の持続可能な森林管理で、二酸化炭素の循環は閉鎖循環であって、地球温暖化に影響が与えないということになります。
余分に使われる電力は電力網に入れられ、その費用で新たな再生可能エネルギー発電所が設立されます。
さらに、カーペットのある部屋はハウスダストアレルギーのお客様を配慮して、寄せ木張りの床にかえた。
頑丈な造りもいかにもドイツらしいですけど、先見性もあります。「5年先だけ見ると、こんなの意味じゃないけど、私たちは三代目で、四代目もいますし・・・ 例えば、新しくオークの寄せ木張りの床を敷いてもらった。もちろん、寄せ木張りだから、安くはありませんが、50年ぐらいは持つでしょう。何かあったら、研磨すればいい。安物でしたら、改築が必要になります。」
こんなに環境にやさしいからといって、ホテルはゴミ箱は一つしかありません。「外国のお客様もたくさん来まして、当然ドイツのごみ分別は知らないんだから・・・」とごみ分別はスタッフが担当しています。
いまだに首をかしげる読者さんがいれば、是非、ホテルの朝食を試し下さい。ドイツ全国誌の「Der Feinschmecker」(グルメ)でも紹介されましたので、おいしいに違いありません。
Best Western Premier Hotel Victoria
Eisenbahnstraße 54
79098 Freiburg
℡ +81-761 20734 402
いつもいつもタイムリーな話題提供をしていただいてありがとうございます。かわいいだけじゃないところがいいような、反面憎らしいような・・・・。
ところで、潰れそうな自治体にお願いされて、今まさにご紹介にあるような解決策を七転八倒しながら、わたし作っているところです。
フライブルグ市だけではなく、黒い森には産業革命以後のドイツの魂と言うか叡智がギューっと詰まっているところですね。私の周りにもドイツが発祥の「林学」を学んで実践しておられる方がたくさんいます。一人は、京都大学で林学を学んで、地元に帰って大工をやっている人がいます。こうしてドイツから受け継がれた理念、ささやかですが日本でも花を咲かせますよ。
年の瀬だけに大工(第九)、織り込んでみました(^_^;)
投稿情報: asariya38 | 2011/12/23 11:39