ドイツのメディアはどのように規制されているのかと最近よく聞かれましたので、少しまとめました。ドイツの基本法(憲法)では国家がラジオやテレビに(直接且つ間接的(財政的)に)影響を与えてはいけないと定められています。 放送を国家から分離させるために、公共放送協会と同様に、監督・監視機関も国家機関から離れた立場に設 置されました。そこで、全てのラジオやテレビ局を監視する、又は免許を付与するLandesmedienanstaltがあります。その直訳は『連邦メディア監督機関』です。連邦制のドイツではラジオやテレビ放送の権限も各州にあるため、連邦メディア監督機関も各州にあります。(ベルリン州とブランデンブルク州、それからハンブルク州とシュターク・サラレースウィッヒ・ホルシュタイン州は条約を提携して、二州で一つのメディア監督機関を運営して、16州で合計14監督機関があります。右の地図をご参照)
連邦メディア監督機関は公法によって設置される特殊法人Juristische Person des öffentlichen Rechts です。連邦行政の一部ではないのにもかかわらず、執行権の権利を主張して、放送局、ラジオ局等には対応する事が出来ます。他の行政機関と違って、連邦メディア監督機関は専門監督機関に監督されていないため、独立が保障されています。
ただし、連邦メディア監督機関の法的監督は限られています。例えば、CMを禁止することは出来ません。それは、各州の内閣官房又は担当省の役割です。
各州での細かい組織は異なってはいますが、まず執行権を持つ業務執行を行っています。それとは別として、独立している、多元的な監視委員会が存在しています。その委員は各州の州議会の可決(3分の2の多数決)で任命されます。数州には、州議会以外に多元論委員会に委員を派遣するグループもあります: 州議会議員、州政府の代表者、キリスト教やイスラム教の代表者、芸術家、ジャーナリスト、小中高等学校の教員、経済団体の代表者、自然保護団体の代表者等と様々な方が参加しています。
民法の放送局の放送許可、周波数指定、ケーブルキャパシティー指定を与える他に、連邦メディア監督機関の大きな課題は民法のラジオ局、テレビ局の監督です。それは、放送条約、青年保護条約、連邦メディア法が守られていることを確認しています。
※ 公然性」 (Allgemeinheit) の利益の確保
※ 均衡性」(Ausgewogenheit) 、意見の多様性(Meinungsvielfalt)の保障
※ 広告ガイドラインの違反の訴追 ※ 青少年保護法の違反の訴追
※ 暴力の賛美(Gewaltverherrlichung)、暴力の過小評価(Gewaltverharmlosung)
※ 戦争の賛美(Kriegsverherrlichung)、民衆煽動(Volksverhetzung)、人種憎悪の煽動(Aufstachelung zum Rassenhass)
※ ナチスの行為の賛美及び過小評価
※ 憲法に違反する組織のプロパガンダ、またはその象徴の使用
※ 青少年の性虐待又は暴力の性的描写、又は動物と人間観の性行為 (アニメ映像を含む)
※ 青少年の性を強調する姿勢 (アニメ映像を含む)
※ 人権の侵害 (特に身体障害者、精神障害者、人間死に際の描写)
※ 謀殺、故殺、民族の大量殺戮等という違法行為への手引き
些細な事なら、連邦メディア監督機関による注意 (Beanstandung)や罰金、深刻な場合は放送許可の取り上げまでとなります。(§ 38 Abs. 2 - 4 Rundfunkstaatsvertrag und § 20 Abs. 1 und 2 Jugendmedienschutz-Staatsvertrag)
その他に、連邦メディア監督機関はメディアコンペテンシーの促進の責任も持っています。そのために多くのメディア監督機関は「市民放送局」という、オープンチャンネルの形で市民がプロデュースするラジオやテレビ番組の媒体も提供しています。(ただし、それはどれぐらい広がっているかと言うと、私はドイツに住んでいる間の弱20年(99年まで)観た事がありません。)
映画制作の助成金を出すメディア監督機関も多少あります。 それから視聴者の苦情ももちろん受け付けています。
連邦メディア監督機関は放送料金(NHKに払う料金に似たような制度)の約4%で成り立っています。
多元を保障するためにはメディア関連会社の合併にも発言権があります。例えば、ドイツ最大のタブロイド新聞を所有しているアクセルシュプリンガー社がプロゼィーベンザットアインス放送局を買収しようとした2006年1月には連邦メディア監督機関の駄目出しで、買収が実現されませんでした。
青少年保護法下で連邦メディア監督機関は事前にテレビ局から番組の情報をもらって確認をします。ドイツの法律下では下記のルールがあります。
※ 午前6時から午後8時まで: 年齢制限無し
※ 午後8時から午後10時まで: 12歳からの映画・番組
※ 午後10時から午後11時まで: 16歳からの映画・番組
※ 午後23から午前6時まで: 18歳からの映画・番組
それはインターネットにもあてはまりますため、私の好きな刑事ドラマの「タートルト」は日本時間午前6時から午後2時の間しかみられません。 テレビ番組、テレビドラマ、エンタメ、リアリティーショー等と言う番組は録音して、放送後に評価されます。 禁止と指定された映画の放送は不可能です。カットすれば、16歳と同様の扱いで、午後10時の時間帯でも放送することが出来ます。
私は多感な14歳にドイツの検閲史の本を貪りました。変なところで建設されますよおね。一番記憶残ったのは、ご存知のダイハードというアメリカ映画に登場する悪党は東ドイツ人(左の写真の男性)という設定で、そのリーダーの名前はハンスです。
ただ、東ドイツというのがまずいから、ドイツ吹き替え半ではジャックとなっていたそうです。どういった経緯でそうなっていたか(メディア監督機関がかかわったかどうか)分かりませんけれども、ある程度当時東西ドイツの緊張感を表しているでしょう。
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